土留部材引抜同時充填注入工法2019年8月23日時点 アーカイブ

土留部材引抜同時充填注入工法

技術の概要

民家や地下埋設物などの重要構造物に近接した箇所において仮設材にて土留めを行う場合には、土留め杭引抜時に周辺地盤に大きな影響が発生し、建物補償など事業損失が発生する場合も多かった。この有効な解決策が無いまま、土留め杭をそのまま残置するしか手立てが無く多くの関係者が困っていた。
 本工法は、引抜きによって発生する空隙に対して、予め設置しておいた充填管より引抜きをしながら同時充填する。多種多様な地盤条件や引抜機械の違いがあるという条件下で、引抜き後の地盤変位を高度に抑制し、安心して土留材の引抜回収を可能とした。
 近年は大雨による大災害が頻発していることもあり、河川・ため池堤防における土留め工事において、水みちを作らないオンリーワン対策工法として特に使用実績が増えている。近接工事におけるコスト削減と事業損失防止、鋼矢板の再利用による環境負荷の低減に役立つ。水中での施工も可能な工法である。

この技術の登録情報について

副題 仮設土留材引抜き時の地盤変位抑制工法
登録機関(過去に登録された機関も含みます) NETIS
NETIS登録番号 SK-080012-VR
登録区分 工法
工種分類 仮設工(矢板工ー矢板・H鋼引き抜き工),共同溝工,港湾・港湾海岸・空港,河川海岸,上下水道工
ICT技術の該当
実績 丹波綾部道路三ノ宮地区他整備工事 他203件
(2019年1月11日現在(施工中含む)) 
国土交通省47件、農林水産省22件、都道府県自治体92件、電力等民間43件
開発年 2003年
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技術の特徴

①新規性
仮設材にて土留めを行う場合、近接した民家や埋設物などに対する土留め杭(鋼矢板やH鋼杭など)引抜時の
影響低減の決め手になる方法は無く、多くの現場で鋼矢板の残置がやむなく行われてきた。
また原則として仮設材の残置が認められない堤防工事においては、薬液注入や地盤改良での対策が検討されることが多いが、
構造上や費用面においての課題があり、特に有効な解決策が望まれていた。

②期待される効果
多種多様な地盤条件や引抜機械の違いがある条件下においても、高度に周辺地盤の沈下抑制効果を発揮することが出来る。
これまでの沈下計測結果に拠れば、引抜位置から2~3m離れた箇所においては、地盤の沈下は数ミリ程度にとであった。

③従来技術との比較等
残置に比べて、10~30%のコスト削減となる。
(鋼矢板Ⅲ型以上、リース期間6ケ月以内の場合)残置すると将来的な地中障害物となり、
その際の追加コストは多額になる場合も多い。
また残置ができない堤防工事などにおいては、従来技術は引抜前に薬液注入などで
周辺地盤への影響抑止を図る必要があり、そのコストは本工法の400%となる。(NETIS登録情報より)














技術の適用条件・適用範囲

①適用条件
土留め杭や縁切り杭としての鋼矢板や仮設桟橋のH杭で、引抜が可能であればすべて対処できる。
鋼管矢板や既成杭の引抜時にも個別案件ごとに検討した上で適用可能。


②適用範囲 (特に力を発揮する条件)
1)住宅密集地での鋼矢板土留めが必要な上下水道工事、河川堤防下に仮設構台や土留めが必要な橋台や
橋脚を構築する道路工事、河川堤防やため池堤防に二重締切土留めが必要な樋門工事などでのニーズが特に多い。
2)幹線道路などにおいて橋脚や水路などを構築する場合は土留めが必要な場合も多く、
供用道路の通行車両や通行人への安全性の確保、供用道路面下の重要な埋設物への影響防止が必要であり、
本工法の適用が有効となる。
3)近接施工や堤防全般においての土留め工事、仮設桟橋工事において、広く適用される。
4)近年、自然由来も含めた土壌汚染対策工事が実施されているが、汚染物質除去や浄化後に、
隣接地からの汚染物質の移動防止のため、遮蔽壁の機能を持つ本工法の採用実績が増えている。














施工方法について

① 土留部材の引抜きによって発生する空隙に対して、予め設置しておいた充填管より、
専用の充填材を鋼矢板引抜きと同時に連続的に充填する。

② 充填管は条件によって使い分ける。
1)鋼矢板を打ち込む前に専用の充填管を鋼矢板に溶接固定しておく方法(YT-1工法)
2)鋼矢板を引抜く直前にボーリングマシンでロッドを削孔して建込む方法(YT-3工法)

③ 1本の充填管で6枚の鋼矢板を充填する(YT-3工法)

④ 本工法に用いる充填材は本工法独自に開発したセメント系の恒久注入材の一つである。
2液を別々のホースでロッド先端まで供給し、先端モニター内で混合され、約1分のゲルタイムでゼリー状に固まる。
(流れている箇所は固まらない)

⑤  充填材の最終強度はN値換算で15∼30程度と、地中障害物にならないように、
容易に掘削可能な強度にコントロールされている。
堤防等で将来的にも「水みち」にならないように、長期に亘って収縮しないという特徴もある。

⑥  施工箇所は、住宅に近接した箇所など狭小な場所も多いため、充填用のプラントは4t車1台に搭載できるように
コンパクトにまとめて、移動可能な車載式としている。













その他の情報

①地盤条件や施工機械に応じた充填量の設定
実際の地盤は多種多様であり、最終的な充填量を決めてしまうすることは不可能である。
引抜後の空隙や周辺地盤の緩んだ部分にも充填材は回っていくので、その分の充填材の量を送る必要性がある。
現時点においては、油圧式杭圧入引抜機による施工の場合は鋼矢板の断面積の約4倍、
バイブロハンマーによる施工の場合は約3倍を標準充填量として計画し、現場において試験施工等の方法で妥当性を確認している。
今後も充填実績をデータベースとして蓄積していくことで、標準充填量をもっと細かに設定する予定である。 

②発展性
1)本技術は特許権による制限はあるものの、その権利を許諾すれば技術移転は比較的容易に行うことができる。
よって、東南アジア諸国など、今後、日本と同様にインフラの更新ニーズが高まる国々においての国際的な展開が期待される。
(既に国際特許申請中)
2)既成杭の引抜時にも周辺地盤の沈下抑制にも技術移転が可能である。
3)近年、自然由来も含めた土壌汚染対策工事が実施されているが、汚染物質除去や浄化後に、
隣接地からの汚染物質の移動防止のため、遮蔽壁の機能を持つ本工法の採用実績が増えている。
市街地での施工が多い土壌汚染対策工事の土留め材引抜時の影響防止に加えての付加価値があり、期待される。











この技術を提供する会社の連絡先情報

会社名 協同組合Masters 地盤環境事業部会
部署 土留部材引抜同時充填工法研究会
担当者 渡辺広明
郵便番号 550-0012
住所 大阪府大阪市西区立売堀2-4-19 日東ビル2階
電話番号 090-7575-6025
FAX番号 06-6110-8055
サイトURL https://www.hikinuki.jp/

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