【開発秘話インタビュー】トンネルウォール(ゴトウコンクリート)

トンネルウォール -プレキャスト監視員通路壁-(NETIS CB-070003-V)
ゴトウコンクリート株式会社


東京営業所長 坂上貴弘(さかじょう たかひろ)さんに開発秘話を聞く

施工性向上 現場の声がヒントに

ー 「トンネルウォール」はどのように生まれたのですか。

 きっかけは、当時の日本道路公団が発注していた東海北陸自動車道の山岳トンネル工事です。2006年のことで、現場は岐阜県内の豪雪地帯にありました。 設計は現場打ちなのですが、積雪などにより、そもそもの工程が遅延していました。また、監視員通路の構築は最終工程に近い。山間部だけに生コン工場からの距離もあり、供給の停滞や品質の低下があれば、さらに工期は遅れてしまいます。道路公団の担当者から、「しわ寄せがきている。何とか工期を縮める方法はないか」と話がありました。  当時、監視員通路をプレキャスト化した製品はありませんでしたが、こうした現場の声がヒントになりました。「プレキャスト製品のニーズがある」。当社が培ったノウハウを生かしながら、監視員通路のプレキャスト化の開発につなげました。


ー トンネルウォールの特長は。

 プレキャスト化により、「高品質」「美しさ」を実現しました。また、従来の現場打ちの監視員通路に比べ、型枠の設置や生コン打設、養生などが不用となり、工期を約4分の1程度(1,000メートル当たり)に短縮できるようになったと考えています。
 さらに2016年には、製品を据え付ける際に、高さ調整を簡単にできる「アジャスター機能」を追加しました。左右の底面に設けたボルトで高さ調整を行うことができます。手間と時間を要していた据付作業を大幅に効率化しました。


ー 現場の反応はどうですか。

 特に、改良前から使っていたお客さまには喜んでもらっているようです。アジャスター機能によって、「施工性が上がった」「無駄が少なくなった」といった声をいただいています。アジャスター機能についても、現場からの施工性アップを求める声に応えて改良した機能です。1日当たりの施工量が1.5倍程度になったという現場もあります。


ー 開発以来のトンネルウォールの納入実績はいかがでしょうか。

 東日本大震災後の三陸沿岸道路(復興道路)をはじめ、新東名高速道路、中部横断自動車道、新名神高速道路などの他にも、新直轄・直轄工事で国交省や自治体発注の実績も増えています。
 今後は、事業量の増加が見込まれるメンテナンス分野でも採用が広がると期待しています。高速道路は供用しながらの作業となるので、夜間工事や工期短縮がどうしても必要です。それだけに、プレキャスト製品の利点が、より生かせるのではないでしょうか。

 

ー 建設業界の「働き方改革」が進んでいます。生産性向上のためにもプレキャスト製品の活用が不可欠ですね。

 建設業の人手不足はますます深刻になっています。プレキャスト製品を使うことで、品質を均一化できるし、比較的経験の少ない方でも作業を行うことができます。
 トンネルウォールの場合は、3~4人が1つのパーティとなって作業を進めます。現場の状況に合わせた割付図面も当社で作成するので、割付図と製品に記した番号を見ながら機械的に配置することが可能です。また、当社の担当者が、頻繁に現場を訪問し、品質や施工性を高めるためのフォローを継続的に実施しています。

 

ー これからの目標は。

 「トンネルウォール」の良さを伝える活動を継続し、発注者や建設コンサルタント、元請企業など、より多くの皆さまに現場で使ってもらえるようになりたいと考えています。現場に採用いただくことを通じて、「工期短縮を図りたい」「技能者が足りない」といった建設業界が抱える課題の改善に少しでも貢献できれば嬉しいです。